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広告付きバス停コレクション

大型の屋根と広告パネルを備えた新しいタイプのバスシェルターは全国で設置数が増加している。バス停の維持管理業者は広告収益からメンテナンス費用を賄う仕組みであるため、バス事業者は金銭的負担なく利用者の利便性向上を図れることが普及の一因となっている。日本において広告付きバス停の開発、製造、設置、管理を行っているエムシードゥコー社によると、2020年現在では全国42都市で2500基以上が稼働しているという。

( 公開、2020/09/19 一部修正)
目次

    全国での展開

    エムシードゥコーは仏ジェーシードゥコーと三菱商事の合弁で2000(平成12)年に設立された。2003(平成15)年の国土交通省通達によって公道上で広告媒体の掲示が認められ、ジェーシードゥコーがフランスをはじめ各国で展開している広告収益をもとにバス停の設置や維持管理を行うビジネスモデルが日本でも実現可能となった。

    2003(平成15)年3月に岡山、翌年11月に横浜で広告付きバス停「B-Stop」の設置を開始した。以降、高い広告料の見込める大都市での導入を進め、現在では42都市に規模を拡大している。

    鹿児島や富山では、地図や掲示物を掲載し裏面に広告を掲示するスマートパネルが市中心部に設置されている。

    スマートパネル (鹿児島)
    広告付きバス停「B-Stop」およびスマートパネル(CIP)を導入した都市とその合計数
    導入都市合計
    20033月31日: 岡山1都市
    200411月: 横浜・名古屋・神戸4都市
    20069月: 広島、11月28日: 福岡6都市
    20072月: 静岡、4月: 新潟、7月: 浜松、8月: 札幌、9月: 富山、10月1日: 西宮、11月: 大阪、12月: 福山・北九州・旭川
    16都市
    20083月: 和歌山、4月: 仙台、5月: 岐阜、8月28日: 大分、9月: 函館・倉敷・長崎、10月: 高松・奈良・豊橋、12月: 東大阪・長野・藤沢・川崎・横須賀・相模原32都市
    20093月: 千葉・さいたま、9月: 吹田、10月: 熊本36都市
    20104月: 京都、12月: 東京38都市
    20112月: 堺39都市
    20148月: 鹿児島40都市
    201512月: 柏41都市
    20203月: 前橋42都市 (2500基以上)

    ギャラリー

    仙台
    東京
    東京
    東京
    倉敷
    広島
    北九州
    福岡
    大分
    長崎

    デザインと構成

    北九州

    エムシードゥコー社が全国で設置しているバスシェルターは、基本的な規格は共通であるが、各都市、事業者、利用状況に合わせてデザインや構成が変更されている。

    デザイン

    2004(平成16)年から2007(平成19)年にかけて横浜市、神戸市、名古屋市、大阪市、福岡市、札幌市、仙台市などで導入されたバスシェルターはGK設計がデザインを担当している。利用者の快適性や都市景観・風土を考慮したデザインがなされている。2010(平成22)年に京都市で導入されたモデルはGK京都によって手掛けられた

    多くの都市で都市景観に関する賞を受賞しており、北九州市では2009(平成21)年7月、洗練されたデザインが景観に与える効果が評価されて、市の主催する「第5回北九州市都市景観賞」屋外広告デザイン部門を受賞した(設計: GK設計、施工: エムシードゥコー)。

    第5回北九州市都市景観賞受賞作品 広告付バス停 北九州市表彰理由:
    このような新しい広告媒体となる機能を持ったバス停が出現し、洗練されたデザインの広告がまち中に掲出されることは、バスを利用する人をはじめ、見る人を楽しませ、都会的な雰囲気と景観を演出するツールになると考える。

    同年11月には、デザイン性に加えて施工・管理のシステムが評価されて広島市主催「第12回ひろしま街づくりデザイン賞」サイン・アート部門を受賞した(設計: GK設計、施工: エムシードゥコー)。

    第12回ひろしま街づくりデザイン賞受賞パンフレット 広島市選考理由:
    デザイン的な評価とともに、公共交通機関の利用者の利便性向上や、施工から維持管理までの経費をすべて広告収入で賄うという利用者負担のないシステムなど、社会貢献上の面からも高く評価できる。夜間のライトアップにより美しい夜景づくりに貢献するとともに防犯対策にもつながるなど、広島の街に、華やかさを与える魅力あるアイテムの一つとなっている。

    翌2010(平成22)年にも、街の印象を向上させるとして西宮市主催「第5回西宮市都市景観賞」まちなみ発見クラブ賞(市民特別賞)を受賞した(設計: エムシードゥコー、施工: コガセ工業)。

    第5回西宮市都市景観賞(平成22年度) 西宮市シンプルにまとめられたデザイン性の高さが、周辺のまちなみの印象を良くしています。このバス停では、背後の建物ともうまくマッチしていて、用海線沿いの通りのまちなみに溶け込んでいます。

    広告パネル

    広告パネルは裏表2面の広告面を持ち、車道に直交して設置される場合と平行に設置される場合がある。掲出広告は原則2週間ごとに切り替えられる。

    平行設置の場合、従来は車道側への広告の掲出は認められていなかったが、2008(平成20)年3月25日付の国土交通省通達をもってこれが許可された。実際に掲出する際はさらに各自治体において道路占有許可基準の改正が必要となる。たとえば横浜市では2011(平成23)年4月5日付の道路占有許可基準の改正によって認可された。認可以前は車道側には停留所名を表記していた。

    照明

    上屋天井と広告パネル内に蛍光灯が設置されている。夜間の照明点灯によって防犯効果も期待される。

    広告パネル
    照明

    ベンチ

    独立したタイプのほか、歩行者の往来を妨げないよう車道側に寄せられたタイプやバス停設備と一体化されているタイプがある。ベンチを設けなかったり、一般的なベンチが使用されていたりする場合もある。

    独立型
    一体型
    ベンチなし
    一般的なベンチ

    規模、設備

    通常の1スパンのタイプ(「標準タイプ」「4m標準タイプ」と呼ばれる)に対して、利用者の多いバス停では倍の長さのタイプ(「ダブルタイプ」「9.5mダブルタイプ」と呼ばれる)が導入される場合があり、ダブルタイプは主に都市中心部で見かけられる(福岡市天神、大分市中央町ほか)。

    付加設備として、バスロケーションシステムを備えているバス停もある。

    標準タイプ
    ダブルタイプ
    バスロケーションシステム (福岡)
    バスロケーションシステム (広島)
    エムシードゥコー社バスシェルターの典型的な材質とサイズ(例)
    サイズ長さ標準タイプ 4100mm、タブルタイプ 9500mm
    2000mm
    高さ2800mm
    主要材質H型鋼 アルミ鋳物
    壁面ガラス強化ガラス
    広告パネル本体枠アルミ押出形材、強化ガラス
    縦 1888mm x 横 1338mm x 奥行き 205mm
    表示面縦 1710mm x 横 1160mm
    ポスター露出面縦 1650mm x 横 1100mm
    ベンチ支持部分鋼管
    座部木質樹脂アルミ複合材

    出典

    1. 沿革 MCDecaux
    2. 広告パネル付きバスシェルター (B-Stop) GK設計
    3. 広告付きバス停 京都モデル GK京都
    4. バス停留所上屋の車道側広告添加について (第95回横浜市都市美対策審議会) 横浜市 2011/08/26
    5. 阪急・阪神 西宮市内に「広告付きバス停留所上屋」完成 阪急バス・阪神電気鉄道・阪神バス 2007/09/28